アメリカで家を買う前に

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Emi

建築家

アメリカで家を買う前に

アメリカで家を購入される予定ですか? アメリカにいるのだからドラマに出てくるような綺麗で大きなお家に住めると思いきや、以外に家は古いのに値段は高く、予算内では思ったより大きな家は買えないと言うのが現実ではないでしょうか。日本人を含めアジア人は、車で遠く離れた一軒家よりも、都会に近くて便利なところを好みます。町に近い物件は、残念ながら、ドラマに出てくるよう家は何億もしてしまいます。さらに、日本と違って、アメリカでは売買されるほとんどの物件が、新築ではなく中古の物件になります。中古の物件と言っても、日本のように物件の価値が下がるわけでもありません。中古の物件を購入する前に、何をきをつけれるべきなのでしょうか? 建築家として、不動産屋とは、また別の視点でいくつかあげたいと思います。

不動産屋は100%信頼できる? 

家を購入されるほとんどの方が不動産屋の方と一緒に家を見て回られていることと思います。不動産屋の方は学校区や交通、その地域の特徴など、購入を決定する重要な情報を持っています。購入する物件をどのあたりにするかを決めるには、不動産屋の情報は大切です。しかし、家そのものに対しての不動産屋の情報はあまり期待できません。不動産屋は家を購入してもらわなければ、収入にはならないので、どうしても購入者にその家を購入をうながす情報しか言わず、負の情報は隠してしまいがちです。(家を購入する時には不動産屋には一切支払いはありませんが、あなたが家を購入することによって、売主から売主の不動産屋に通常3%、買主の不動産屋に3%支払われます。あなたが、家を売るときには同じように通常合計6%を両方の不動産屋に支払うことになります。)不動産屋の意見だけで購入を決めてしまわずに、しっかと、インスペクターや建築家などの建物をよく知り尽くしているプロフェッショナルから意見を聞くことをお勧めします。

見た目にごまかされないで! 

家のオープンハウスに行くと、中古の物件なのに新築かと思うほど綺麗なことがありませんか? 1960年代前の家でもこんなに綺麗なら、古くても購入したいと思うことでしょう。家は生き物なので、いくら見た目がきれいでも、年代が古ければ、それだけいろいろなところが古くなっています。人間と同じで、整形すれば見た目は若くても体は年相応なのです。ぼろぼとの物件でも、まわりにぺたぺた新しいものを貼り付ければ、いくらでも新築のように見せることができます。古い物件は壁の内部に断熱材が入っていないことや、天井の中や、壁の中にカビや水漏れの後があることがありますが、上から貼ってしまえば、普通の人にはわかりません。購入したあとに、寒くて暑い家だとわかり、断熱材が入っていないことに気づいたり、壁や天井にしみがでてきたりして水漏れなどに気づくことも多いのです。家の修理は日本とは違って時間もお金もかかります。中古の物件を購入するには、外見に惑わされることなく、構造や建物の健康状態をきちっと見ることが肝心です。

信頼できるインスペクターをさがせ!

私たちの健康状態を知るのに、人間ドックに入ったり、お医者さんにチェックアップに行ったりしますが、建物の場合、それに近い役目がインスペクターです。建物を購入する前には、必ずインスペクターに建物の健康状態をチェックしてもらうべきです。ただ、お医者さんにもいいお医者さんからいい加減なお医者さんがいるように、インスペクターにもピンからキリまでいろいろです。建物をよく知り尽くし、経験豊富で、細かいところまで見てもらえるようなインスペクターに見てもらえば、家の欠陥や、弱いところ、これからかかるであろう修繕の予想などをきちっと調べてもらえます。購入まえに、身の危険を及ぼすような欠陥がみつかれば、売主は治してから、売らなくてはなりません。一軒家の場合、コンドやビルとは違って、細かく確認しなければならない箇所がたくさんあるので、かならず、住宅の経験が多いインスペクターを探してください。よいインスペクターは、泥だらけになって床下や天井の中をみてくれたり、電気、水道、下水の配管、電気パネルや冷暖房や、屋根にあがって屋根の状態などたくさんの部分を見てくれます。綺麗な洋服のままでみているインスペクターは期待できません。インスペクターは見たものをずべてレポートにして渡してくれるので、きちっとレポートに目を通すことが大事です。もう一つインスペクターを選ぶ際に、不動産屋からの紹介してもらうのはお勧めできません。なぜなら、インスペクターは不動産屋に不利(建物が売れなくなるような)な情報をなるべく出さないようにするからです。インスペクターは、欠陥など見逃してしまっても罰則はありません。

知っておくべき事

中古の物件でも、人が常に手を入れている建物は長く持ちますし、今よりもいい材料を使っていることも多いです。私自身も1960年代の物件を購入したことがありますが、絨毯をはがした下からあらわれた床材はすばらしいものでした。ただ、古い物件を購入する時はいくつか知っておくべき事があります。以下に書かれるものは、一般のインスペクターでは調べることはできません。

1)アスベスト 1940年代から1970年代の家のほとんどが、アスベストを建物に使用しています。1973年がアメリカでは一番使われていました。アスベストはファイバー状のもので、断熱材、床材、天井、ボイラーのパイプなど、建物のあらゆる場所につかわれています。アスベスト自体は小さく、呼吸時に肺に入ってしまい、肺がんの原因になると言われています。ただし、アスベストが使われているからと言って、即危険というわけではありません。アスベストが使われている材質が割れていたり、破れていたり、また、改築などの時に壊したりするときにアスベストが舞ってしまい危険なのです。使われている材質の状態がよければ、そのままでいれば問題ないと言われています。材質が割れていたりした場合は、すぐに、州の法律に従ってください。アスベストは危険と認知されていますが、フェデラルの法律では禁止されておらず、州ごとに規則が違います。

2)リードペイント  アメリカでは1977年に子供に有害だと言うことでリードのペンキが使用を禁止されました。今ではアスベストよりも使用を厳しく禁止されていて、州や町からの危険をしらせる手紙を受け取った方も多いと思います。HUD (United States Department of Housing and Urban Development)によると、1940年代前の建物の90%、1960年代前の建物の80% 1970年代前の建物の62%にリードを含んだペイントが使われています。リードペイントは特に子供や妊娠している人に影響を受けやすいといわれています。1978年以前の建物の場合、古くなってもろくなったペイントのが埃や塵によって浮遊している場合があるため、小さいお子さんがいる場合は、HUDのウェブサイトに普段どの様に気をつけるべきかが書かれているので、読んでみることをお勧めします。

3)リード管(鉛の配管) 1920年代には町の水道管からはリード管はほぼ撤去されたにもかかわらず、EPA( United States Environment Protection Agency)によると、1986年以前に建てられた家にはほぼリード官やリード製の蛇口または、銅管をつなぐためのはんだ付けにリードが使われています。残念ながら目視だけでは、すべてのリード管を確認することは出来ません。リード管を通った水は、シャワーやお風呂には大丈夫だと言われています。飲み水はフィルターを通してから飲むようにすることで防ぐことができます。どのくらいのリードが水に含まれているかは、私も利用しましたが、飲み水の水質検査を請け負っている会社もありますし、市販のlead test kit を購入してご自分で調べることも出来ます。

4)ラドン ラドンとは地中にある天然の放射性ガスで、土や岩、地下水などから地上に放出されています。アメリカでは肺がんになる原因といわれ、喫煙についで2番目に多い肺がんの要因です。ラドンは無味無臭で無色の気体で、アメリカ全土に存在しています。新しい建物は家の中の空気の換気システムが備わっていますが、古い建物には換気が不十分なため、ランドンガスが地下などにたまり、家中に充満する可能性があります。古い家の場合、建物の土台や地下室の壁の割れ目や穴などからガスが入ってきます。EPAがラドンの値を示す地図を公開しているので、物件のあるエリアのラドン量を確認してみてください。リード管のテストと同じように、ラドンの量は自分で調べられるキットが販売されています。

最後に、

ここに書かれている”知っておくべき事”を読むと、中古の物件は怖いと思ってしまう方もいるでしょうが、きちんと建物の健康状態を把握して、必要な検査をすれば、安全に安心して住めます。どれも似たようで面白みのない新築物件よりも、代々の住人に愛されてきた中古物件は、どれも個性的で、新築には無いなんともいえない暖かな空気感が家中を覆っています。たしかに、新築の物件よりも、住みながら手を入れなければならない箇所は多いいですが、そうやって手をいれていくことより、自分の家により愛着を持つようになると思います。古くても、いい物件に出会えることを願います。

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